M&Aのプロセスに意向表明書の提出というものがあります。M&AではM&Aアドバイザーを通して、売手側企業の情報が「ノンネームシート」、「インフォメーションパッケージ」といった資料の形で、買手候補企業に提出されます。その後、買手候補側でさらに詳細な情報や会談などの必要がある場合、双方企業トップによる面談が行われます。
この面談で交渉を進めていく中で、買手候補側から提出される書類が「意向表明書」です。M&Aを本格的に行う意思を表明するとともに、希望買収価格や買収条件などについて記すものです。
意向表明書について述べる前に、まず、トップ面談について確認しておく必要がありますので、そこから順番に解説していきます。
トップ面談・交渉とは
売手側企業・買手候補側企業双方による情報の提供や問い合わせを経る中で、さらに詳細な情報、会談などが必要になると、M&Aアドバイザーを間に入れて、双方企業のトップによる面談・交渉が行われます。
主な面談・交渉事項
双方トップによる面談・交渉でつめていく主な事項としては、次のようなものがあります。
譲渡価格
一般的に、売手側はできるだけ高く売りたい、一方、買手候補側としては、少しでも安く買いたいといった傾向があります。
引き継ぎ期間、条件
売手側トップは、できるだけ早く引き渡したい、早く辞任したい、買手候補側では、1〜2年は残留してほしいなど、双方の思惑があります。
支払い条件
譲渡代金は一括支払いが原則とする売手側と、状況を見ながら分割による支払いを望む買手候補側とで相反しがちです。
競業避止
売手側では、同じ業種を規模を縮小して行いたい、あるいは類似業種を行いたいといったことに対して、買手候補側としては、同種、類似業種ともにやってほしくないといった点で交渉が難航することもあります。
トップ面談・交渉上のポイント
- 売手側・買手候補側双方トップの信頼関係の構築や、双方がメリットを受けるwin-winの関係を目指す。
- トップ面談では、具体的な売買金額などの条件については行わず、M&Aアドバイザーなどを介して行うこと。
- 交渉事項については、あらかじめ優先順位をつけ、整理しておくこと。
「意向表明書」とはどのようなものか
それでは「意向表明書」について、その意味、内容、ポイントといったものについて見ていきましょう。
トップ面談、交渉と並行して買手候補側から、希望する買収方法、買収金額、その他、買収条件の概要を記した資料として「意向表明書」が売手側に提示されます。この「意向表明書」により、売手側では、買手候補側企業を選定する上での明確な基準がわかること、また、当該企業のM&Aに対する真剣さ、本気度といったものを確認することができます。
「意向表明書」の一般的記載事項
「意向表明書」に記載する一般的な事項と内容は、次のようなものです。
M&Aスキーム
株式譲渡によるのか、事業譲渡によるのか、この時点である程度わかっているならば、そのスキームを記載する。
買収価格
希望買収価格の上限などの範囲について記載する。ただ、売手側の売却希望価格もあるため、あくまで参考価格程度。
デューデリジェンス(DD)
今まで提供された資料について、税務、財務、法務などの面から、デューデリジェンスを行う予定であるといった内容のもの。
そのほかに、資金調達手段、今後の状況により「意向表明書」内容に変更が生じるなどが記載事項となります。
「意向表明書」のポイント
「意向表明書」作成上、留意すべき点としては、以下の点があげられます。
- 買手側企業のM&Aに対する真剣さ、本気度が伝わってくる内容。
- 「意向表明書」には、法的拘束力がないため、違約金、損害賠償金は発生しない旨の記載。
- 株主総会などによる正式な承認を受けたものではない旨の記載。
- デューデリジェンス結果によっては、条件に変更が生じる旨の記載。
M&Aで必要となる書類のうち、「意向表明書」について、その意味、内容、ポイントなどについて述べました。